親父さん/家/自動車/カルピス

先日、妻が実家に帰って親父さんと話した話。

生活は順調かと尋ねられた妻は、私の仕事が変わったことと、まぁそれなりに順調だと伝えた。すると親父さんは

「そうか!じゃあ、ゆくゆくは一軒家を買って車も買えるなぁ!」とうれしそうに言ったそうだ。(どう伝わったんだろうか)

この言葉は、純粋に今の私の状況をうれしく思ってくれているだけで、他意は全くない。昭和という激動の時代に、家を持ち、立派に子どもを育て上げた親父さんらしい言葉だ。

そのことは充分に理解しつつも、私たち夫婦は家を買うつもりは全くない。たぶんこの先もこの考えが変わることはないだろう。もちろんマンションも、自動車だって買わない。

元来、私も妻も何かに縛られているという状況が酷く苦手だ。そして飽きやすく、新しいものごとへの興味が強い。そんな2人が30年ローンで家を買ったらどうなるだろうか?簡単に言えば、一家が滅亡する。

特に妻は30年ローンが支払い終わった後の実家を見て、こう思ったそうだ。

「ローンを支払い終えた後には、その家を直すためにもう20年ローンが必要だわ。」

一方で、自動車を買わない理由はもう少し現実的だ。東京という街に住んでいると、自動車を所有するメリットよりもデメリットの方がはるかに目立ってくる。

東京にはJR・私鉄・地下鉄といった電車の駅が、恐ろしいほど入り組んで存在しており、渋谷駅は既にラスボスのいるダンジョンのようになってしまった。

東京にいる以上、駅を避けて歩くといったことは不可能で、逆にいえば電車があればどこでも行けてしまうのだ。それでも自動車が必要な場合(例えば温泉旅行に行くとか)、その時はレンタカーを使えば良い。最近のレンタカーはちょっとお金をプラスすれば、ラグジュアリーな車種を選ぶこともできる。

実は以前、軽自動車を所有していたことがあった。でも、乗りたいと思った時にバッテリーが上がったり、エアコンのガズが切れたり、ワイパァーの洗浄液が枯渇したり、エンジンのオイルが減ったり、タイヤが劣化したり、カーナビの地図が古くなったり、車検が切れたり、保険の更新案内が送られてきたりした。私は発狂した。

私は車を買ったと思っていた。支払うものを支払えば、後は自由。それが私の中では買うという行為の解釈であった。しかし、その解釈では自動車は永遠に私のものにならなかった。私は自動車を買うことができなかった。だからもう、自動車は買わない。

そんなわけで、妻は親父さんに「私たちは、家も自動車も買わないよ。」と伝えた。すると親父さんは目を丸くしてこう言った。

「家もクルマも買わないで、いったい何を買うつもりだい?」

妻はこの話を夕食を食べながらした。四角いダイニングテーブルには、笑顔で話す妻と、カレーライスに入っているコーンだけを慎重にスプーンですくって食べる息子がいた。

私は氷の入った3つのグラスにカルピスを作った。少し濃い目に作るのがポイントだ。グラスを妻と息子に手渡し、美味しそうに飲む姿を見てから、ゆっくりと飲んだ。

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