音楽

NUMBER GIRLの再結成を手放しで喜べない理由

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平成が終わろうとしている今日、まさかこのバンドについて語る日が来ることになるとは、いったい誰が予想したであろうか。

「NUMBER GIRLが再結成」

そのニュースを知ったのは、こたつでぬくぬくとTwitterを見ていた時のことだった。唐突に、突然にタイムライン上に現れたその知らせに、私は驚きのあまり放屁した。その勢いで3センチメンタルほど身体が浮き上がった。おまけに実も出た。

私は洗面所でパンツを洗いながら泣いていた。それは歓喜の涙であったと思う。カート・コバーンだったらとっくに死んでるくらいの人生を生きてきて、そのあいだ何度となく泣きながらパンツを洗ってきたが、嬉し泣きは初めての経験であった。

だから今回はNUMBER GIRLについて語りたいと思う。今の若い人はナンバガを知らない人も多いだろうし、最近邦楽ROCKに興味を持った人にもぜひナンバガについて知ってもらいたいと思うからだ。そしてなにより私が語りたいから語るのである。

NUMBER GIRLとは

ウィキの情報によると、「NUMBER GIRLは、日本のオルタナティヴ・ロックバンド。1995年8月に福岡で結成され、2002年11月30日に解散。」と記されている。とはいえメジャーデビューしたのは1999年5月の「透明少女」というシングルなので、メジャーの活動期間はわずか3年半程度であった。

メンバーは向井秀徳(Vo)、田渕ひさ子(Gt)、中尾 憲太郎(Ba)、アヒト・イナザワ(Dr)の4名。結成の経緯はバンドを組もうと思った向井が中尾を誘うところから始まり、中尾が田渕を誘い、向井がアヒトを誘い、NUMBER GIRLが生まれた。

NUMBER GIRLというバンド名からして、女の子が歌っているバンドなのだろうかと推察する人も多いであろうが(私もかつてその1人であったが)、残念ながら歌っているのはバリバリのおっさんである。ギターのひさ子はライブで余興的に歌を披露することはあったが、正式シングル・アルバムの中でひさ子の歌声が収録された楽曲は存在していない。(が、ひさ子はナンバガ解散後にtoddleというバンドで活動しており、そこで彼女の歌声を聞くことができる。)

NUMBER GIRLの音楽性について後述する。

NUMBER GIRLの特異性

NUMBER GIRLは1997年に1stアルバム『SCHOOL GIRL BYE BYE』をリリースした。そのため同じく97年に活動を本格化した「くるり」や「SUPERCAR」と共に「’97の世代」と呼ばれ、人気度合いや音楽スタイルが比較されることもしばしばあった。

同世代にそんなお化けバンドがいる中で、NUMBER GIRLが異彩を放っていたのはどこだったのだろうか。まず1つはNUMBER GIRLは圧倒的な「ライブバンド」であったということが挙げられる。ナンバガのライブはとにかく異様な熱気を帯びていた。そう、ナンバガは「生で観たい」バンドだったのだ。

そうしたライブへの高い評価もあり、彼らは3年半の短い活動の中で2枚のライブアルバムと「記録シリーズ」という収録曲数が100曲を超えるライブ音源のBOXセットをリリースしている。このようなライブ中心のアプローチはキャリアの中で1度もライブアルバムをリリースしなかった「SUPERCAR」とはかなり方向性が異なる印象を受けた。

もう1つナンバガが他のバンドと異なっていたのは、やはりメンバー1人1人のキャラの立ち方であろうと思う。今もそうであるがバンドというのは、大体が1人のフロントマンによって支えられているケースが多い。ミスチルしかりエレカシしかり。

もちろんナンバガも向井秀徳の圧倒的な存在感に支えられている面は多分にあったが、他のメンバーの人気も非常に高かったように思う。特にドラムのアヒト・イナザワは、その凄まじく熱気を帯びた演奏テクニックと純朴な人柄というギャップで人気を博していた。当時は「向井は嫌いだけどアヒトは好きだからナンバガを聴く」という人も多く、またその端正な容姿から女性ファンも多くいたと記憶している。

また私を含めナンバガファンの男性は、ひさ子のギタープレイにぞっこん(死語)であった。ひさ子もまた控えめな性格でありながら、ライブになると凄まじいプレイをした。彼女のギターソロは人の心を揺さぶる何かを持っており、そのスイッチが入った時の爆発力はとてつもないものだった。

こうして改めて彼らのライブを見ると、4者が4様のプレイをしながらもギリギリで1つにまとまっているような印象を受ける。今思えばその危うさのようなもの、「ヤバさ」がNUMBER GIRLの1番の魅力であり、他のバンドと一線を画する部分だったのかもしれない。

NUMBER GIRLの音楽性

本当は1stの1曲目から順に解説しようかと思ったのだが、ここまで書いた疲労とこの駄文を読んでくれている人の気持ちも考えて、私が考える「NUMBER GIRLの聴きどころ」について述べるに留めることとする。

彼らはキャリアの中で4枚のオリジナルアルバムと2枚のライブアルバムをリリースしているのであるが、まず興味深いのはNUMBER GIRLの音楽性というのは初期・後期とも呼べる形ではっきりと分かれている点だ。まずは初期の音楽性から見ていこう。

初期の音楽性、つまり1st〜2ndアルバムにかけては「ひたすらにデッドな音質&演奏のかげに引っ込んだ狂気じみたボーカル」というスタイルをとっており、ピクシーズやペイヴメントを連想させる。(向井はピクシーズの影響を公言しており、後にカバーもしている。)

ペイヴメントの超名曲。

また歌詞の内容は思春期や青春の終わりを想像させるものが多く、「少女」をテーマにした楽曲も複数存在した。そんな初期の名曲の中で見過ごせないのは、やはり「OMOIDE IN MY HEAD」と「透明少女」であろう。(どうでも良い話だがHEAD BankのHEADはここからきている)

「OMOIDE IN MY HEAD」のイントロは何度きいても色あせない美しさがある。NUMBER GIRLはライブの最後には決まってこの曲を演奏していたのでファンにはお馴染みすぎる曲なのだが、向井自身も「この曲は何度やっても飽きなかった」と述べており、ナンバガにとっても特別な曲であったことがうかがえる。

おそらくは再結成ライブの最後もこの曲が演奏されることと思うが、ファンであればこの曲のイントロを正気で聴くのは無理だろう。あまりにも多くのことが頭をよぎりすぎる。タイトル通りOMOIDEがIN MY HEADしてしまうのだ。たぶん私は失神する。

この2曲を聴いてもらうと分かるとおり、初期のNUMBER GIRLというのはローファイでデッドでキラキラとした奇跡的な美しさを持っている。実際、後期よりもこの頃のナンバガが好きだったという人も多く存在しており、彼らがたった2枚でこのスタイルを捨ててしまったことから、後のナンバガフォロワーみたいなバンドを生む要因にもなった。

例えばcaroline rocksもその1つ。

ナンバガの音楽性の変化は3rdアルバムで明確になった。これまでのローファイでキラキラしたサウンドから一転、楽曲は鋭さを増し攻撃的な音へと変化した。メロディやリフには大胆に和のテイストが取り入れられ、歌詞も日本人としてのアイデンティティや日本社会を風刺するような方向へと変わっていった。

先の書いた通り彼らのメジャー活動期間は3年半であり、この変化は非常に短期間のうちに起きたものであった。結局はこの急激な変化にベースの中尾が耐えきれず脱退を申し出たことからNUMBER GIRLは解散となってしまう。

初期と後期の音楽を聴いてもらえば、中尾の気持ちを理解できないとは言い難い。全く別のバンドと言っていいほどの変化だ。ただ中尾の気持ちはいったん置いておいて音楽性だけに着目すると、後期作品は今なお古臭さを感じさせない素晴らしい曲が並んでいる。

私は2ndから3rdアルバムへの大胆な変化は、結果的にNUMBER GIRLの音楽性の高さと表現力の幅の広さを見せつけることになったと考えている。今なお伝説のバンドとして語り継がれることになったのは後期作品の影響が大きいように思う。おそらく2ndで解散していたら、ここまでの評価のバンドとはならなかっただろう。

さらに4thアルバムにいたっては、全編にわたってもの凄い緊張感が張り詰めている。聴いていて息苦しいほどひっぱくした空気感。ここまで張り詰めたテンションを感じるアルバムを私は他に知らない。(サカナクションのDocumentaLyには近いものを感じる。)結果としてそのテンションの糸は切れ、バンドは解散となってしまったというのは4thを聴くと理解できる部分がある。

私自身としては1st〜4thアルバムまで、どの作品も完璧に好きだ。だからこの中から1枚、どれかを選べと言われたら舌を噛むしかない。なのでこれからNUMBER GIRLを聴いてみようかなと思った人に1枚おすすめするとすれば、ライブアルバムの『シブヤROCKTRANSFORMED状態』を強く推したい。

先にも述べたとおりナンバガはライブバンドなのだ。だからぜひライブを聴いてみてほしい。ライブアルバムにはもう1つ『サッポロ OMOIDE IN MY HEAD 状態』という盤も存在するが、こちらはラストライブの模様を収録したものなので最初に聴いてはならない。そんなことするのはエンディングから映画を観るようなものだからだ。NUMBER GIRLの物語を理解した上で、最後に聴くべき作品なのである。

NUMBER GIRLの再結成を手放しで喜べない理由

ということでこの長い文章の旅もようやく終わりが見えてきた。ここまで約4,000字、読んでくれた方には感謝したい。

さてこの文章のタイトルとなっている「NUMBER GIRLの再結成を手放しで喜べない理由」を最後に記しておきたいと思う。ここまできて読者諸兄には、私がいかにNUMBER GIRLを愛しているかが伝わっていることを願うが、つまり私が喜べない理由は「if」を考えてしまうからなのである。

NUMBER GIRL解散を知ったとき、私は4thアルバムの先を見られないことに絶望をした。4thアルバムの鬼気迫る様相に凄まじいものを感じていたからこそ、私はその次の1枚をどうしても聴きたかった。しかし、NUMBER GIRLという物語はどうなるのか、その答えは永遠に存在しないことになった。

そんなこともあって私はNUMBER GIRL再結成を知って飛び上がると同時に、少し悲しい気持ちになった。向井自身が語っているように、おそらく今回の再結成は小遣い稼ぎであることは明白で、新曲をレコーディングすることはないだろうと思う。

仮に新曲をレコーディングするとしても、それはあの当時、私が見たかった物語の続きにはなりえない。あれからもう17年の月日がたっていて、私がおっさんになってしまったように、NUMBER GIRLも歳をとっているからだ。なにもかもが変わってしまった。どれだけ「もしも〜」を考えても、もう時間を巻き戻すことはできない。

私にとってのNUMBER GIRLは「昔好きだった女の子」みたいなもので、存在自体がセンチメンタルなものなのだ。だから綺麗な思い出のままでIN MY HEADしておきたかったんだけど、今回の再結成でOUT MY HEADになってしまったわけで、そんな気持ちがセンチメンタル過剰にさせているんだと思う。

でもさぁ、昔好きだった女の子が今どうしてるかってやっぱり気になるよねぇ。だからやっぱり私は見に行っちゃうんだろうなって、そんなことをぶつぶつと、ぶつぶつと考えている。了

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