【レビュー】RHA T20の音質を知らないのは不幸だと思う

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RHA「T20」レビュー

イヤホンには大きく2種類がある。”音を鳴らすイヤホン”と”音楽を鳴らすイヤホン”だ。
RHA T20がどちらのイヤホンかと言えば、間違いなく後者であると思う。

どんなオタクの世界にも”スペック信仰”というものは存在する。一眼レフカメラには画素数があるし、PCにはクロック周波数がある。イヤホンもまた例外ではなく、再生周波数帯域やドライバー数、はたまたケーブルの芯線の数にこだわる人もいる。

そんなドレンドの渦中において、T20という存在は異質だ。
3万円を超えるイヤホンでありながら、ケーブルを交換することはできない。ドライバーもダイナミックドライバーが1つ入っただけ。スペックマニアが裸足で逃げ出す構成だ。

しかしながら音を聴いてみれば、他のマニア御用達イヤホンと圧倒的に違うことが分かる。はっきり言えば、T20の音は”音楽の心”を理解しているのだ。

先日、元バンドマンの友人に会ったので、試しにT20を聴いてもらった。
音を聴いた友人はポツリとつぶやいた。
「オレは、こういうイヤホンが欲しかったんだ。」

今、RHAは、イヤホン業界を騒がせている会社の1つだ。特に同社の「MA750」というイヤホンの出来は素晴らしく、同価格帯のイヤホンの中で一番だと言う人も少なくない。

そのような事実を見るに、RHAはたまたま「T20」という名機を作れたわけではない。RHAには間違いなく、良い音を作ることができる”何か”が存在するのだ。
そのヒントは、”場所”にあるのではないかと思う。

既にご存知の方も多いかもしれないが、RHAの拠点は英スコットランド、グラスゴーにある。「グラスゴー」という地名を聞いて、音楽フリークであれば、すぐにいくつかのバンドが思い浮かぶだろう。

フランツ・フェルディナンド、ベル・アンド・セバスチャン、ティーンエイジ・ファンクラブ、トラヴィス etc.
彼らは全てグラスゴー出身である。そして、彼らに影響を受けたバンドも数知れず、その影響力は実に大きい。 
そう、グラスゴーは世界を代表する音楽シーンの震源地なのだ。

先ほど登場した友人も、T20がグラスゴー生まれであると告げると笑って言った。
「なるほど、それで音が悪いはずがない」
 
音楽好きを自負するのであれば、一度はグラスゴーミュージック通るだろう。
RHAのイヤホンは、そんな音楽の聖地でこだわりと自信を持って作られている。グラスゴーの音楽ジャンキーたちを満足させるのは、並大抵の製品ではムリだろう。
しかしながら、RHAの自信は揺るぎない。その表れが「全製品3年保証」に繋がっているのだと思う。

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話をT20へ戻そう。T20で聴いてほしい音楽、それはもちろん「ロック」だ。
グラスゴーのロックと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「Mogwai」ではないだろうか。(なにせ彼らは「グラスゴーの至宝」と呼ばれている)
 
T20で聴くMogwaiは、実に素晴らしいものだった。T20はMogwaiが描こうとする深淵を見事に描き切っている。耳や頭ではなく、腹の中心にドスンと響く低音、ギターの轟音と揺らめき。否が応でも音楽の世界に連れていかれるのだ。
Mogwaiの音には独特の重みがあり、T20はそれをありのまま伝える。そして、その重みが緊張感として限界に達した時、”カタルシス”がやってくる。音が洪水のように一気に溢れだすのだ。そして、聴く人を洪水の中に叩き落とす。容赦のない没入感。音量では調整できない「音のパワー」を存分に楽しむことができた。

深い低音と、厚みのある音像。
T20は「これぞ、ダイナミックイヤホン」という機種だと思う。
ロックの世界に没頭したい人は、このイヤホンを聴かない手はない。(特にUKロック、北欧系のロックやメタル好きにはオススメだ)

最後は、少し細かい話をしたい。T20には様々なイヤーチップが付属している。

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T20は小さめのイヤーピースを選択して、可能な限り耳奥まで入れるという装着方法がオススメだ。一番フィット感が良かったのは2段フランジだった。(このチップは他のイヤホンでも使いたいほど気に入った)

面白いのは、T20はイヤーピースでの音質変化が少ないことだ。純正品以外のイヤーピースも試したが、他のイヤホンと比べると音質があまり変わらない。なので、イヤーピースの選択はフィット感で選んで構わないと思う。(サイズ的にはSpin Fitなどが使える)

もう1点、T20には3種類の低音調整フィルターが付属する。
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(写真には無いが低音フィルターもある)

フィルターの違いは吸音材。finalのイヤホン組み立て体験で知ったが、吸音材によって低音の量感は変化するのだ。(密度の濃い吸音材ほど低音が強くなる)

T20のフィルター交換による音質変化は、思ったほど劇的ではなかった。基盤となる音質は変わらず、緩やかに低音(特に深い低音)の量が変化する。
例えが適切か分からないが、この変化は「家系ラーメンのアブラ」に似ているかもしれない。

T20のフィルターは「今日はちょっとアッサリいきたいからアブラ少なめにしよう。」とか「今日はコッテリいくぞ」というような気分で使い分けるのが良さそうだ。
本来の”味”は変わらず、アクセントとして楽しむことができる。

話をまとめよう。
RHA T20は、ここ最近聴いてきたイヤホンの中でも、かなり魅力的な機種だ。もちろん、音の粗探しをしようと思えばできないことはない。しかし、T20の魅力は”粗探しに耐えられる音質”ではなく、”音楽の楽しさ”に触れられるということだと思う。
 
すべての音楽を愛する人に、ぜひ手にとってもらいたいと思うと共に、RHAの今後の展望にも目が離せないと思わされてしまった。
 
P.S.
秋には「DACAMP」という新製品も登場予定?とても楽しみだ。
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